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洋楽の歌詞を詩的な日本語に意訳する趣味のブログです。

シルヴィ・ギエムの「ボレロ」と引退公演

 

モーリス・ベジャール振付のボレロ

 モーリス・ベジャールという世界的振付師が振り付けをしたラベルの「ボレロ」です。「愛と悲しみのボレロ」という映画の中で、ジョルジュ・ドンというダンサーが踊って有名になった演目です。

 

 私、実はバレエを見るのは苦手で、特にクラッシックバレエは退屈で寝ちゃう可能性大なので、チケットあるから見に行こうよ!って、誘われても、お断りしていたくらい、苦手だったんですね。だけど、たまたまテレビコマーシャルで見たボレロのワンシーンが忘れられなくて、なけなしのお金をはたいて見にいったの。

 

 そうしたら、たぶん、計算され尽くした舞台装置の配置、照明、振付であるからだったからかもしれないし、あるいは繊細なのに力強くて、力強いのに柔らかでというギエム氏の演技の迫力からだったかもしれない。とにかく演目が終ったと同時に、びっくりして腰が抜けてしまったんですね。そんなこと生まれて始めてでした。

 

 皆がスタンディング・オベーションをしているさなか、私、あまりにもすごいステージを魅せつけられて、ビックリして立てなかったんです。ものすごい力のこもった拍手と、ブラボー!!ブラボ――!!って皆が叫んでいる嵐の中で、私も力強い拍手を贈らなければ。。と思うのに、なんていうか、体に力が入らなくて、ぽつんと放心状態だったの。本当に。

 

 私、ダンスでも感動しちゃうとすぐ泣いちゃう人間で、千手観音でもリバーダンスでも泣いちゃったんですけどね、ボレロだけは感動しすぎて、涙もでなかった。モーリス・ベジャール氏の振付がすごいからっていうのもあるのだけども、シルヴィ・ギエム氏は100年に一度の天才って言われているんですね。彼女の、その鋼(はがね)のような肉体でとても繊細に力強く、剛柔に踊られるボレロはもう、圧巻。

 

 

■公演場所、回数が限定されているボレロ

 あまりの振り付けの難しさに、「ボレロ」を美しく踊れるダンサー・バレエ団が少なく、モーリスベ・ジャールが許可したダンサーとバレエ団しか踊ることが許されない演目でした。(モーリス・ベジャールがお亡くなりになってからどうなったのかしら?)ですので、この「ボレロ」を踊ってもいいダンサーは世界に数名、バレエ団も世界に数団体しかなく、世界のトップクラスのバレエダンサーとバレエ団の共演ですからスケジュール的にもギャラ的にも公演が難しかったんでしょうね。公演回数が少なく「幻のボレロ」と言われていたくらいでした。

 

 ですが、「東京バレエ団」が 「ボレロ(のバックダンス)」を踊ることが許され、シルヴィ・ギエム氏が親日家であることも幸いして、何年に一度か日本で「ボレロ」が見られるようになりました。ただ、残念なことに今年でシルヴィ・ギエム氏はバレエ自体を引退なさいます。日本でもシルヴィ・ギエム氏の引退公演は12月に行われる予定です。

 

 

■本当にチケットが取れない(特に関東圏では)

 去年か一昨年、あまりのチケットの欲しさに日本舞踏芸術振興団(通称NBS)のメルマガに登録して、先行予約の日時の情報をGETし、先行予約に申し込んだものの、チケットはとれずがっかりしたことがあります。それくらいチケットが取れないのです。

 

余談ですが、シルヴィ・ギエム氏は東日本大震災の際に、4月6日にパリのシャンゼリゼ劇場で、「Hope Japan」というチャリティ公演を開催してくださり、被災後11月には来日し福島県いわき市で震災支援特別公演を開催してくださいました。

 

一応youtubeの画像を貼っておきましたが、舞台芸術というのはタテ、ヨコ、奥行きの3つがそろっての舞台芸術ですから、ぜひ、舞台に足を運んでほしいものです。それに私は2回ほど生の「ボレロ」を見ているので、二次元の映像でも充分にあの美しさを投影できますが、二次元映像の「ボレロ」しか見ていなかったら、ここまでバレエの演目としてのボレロを好きになっていないとおもうんですよね。

 

■病んでいるときこそ、美しい物を見よう

 

最近、思うのは、病んでいるからこそ、美しいもので心を洗い流したい気持ちが強くなってしまうんだろうなっていうこと。本当に、美しい物を見ると、心が洗われるし、本来の心が現れるような気さえします。今年ボレロが見られば(もう広島公演のチケットを入手済み)、その後の5年くらいはつらいことにも耐えられそう。フランダースの犬のネロが絵に魅入られたのと同じように、私はシルヴィ・ギエム氏のボレロを思い返せば、日常の雑務からくる苦しみを忘れられるような気がしちゃうの。芸術って、本来そういうものなんだろうなって、思えたシルヴィ・ギエム氏の「ボレロ」なのでした。

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